南区さんぽ道

小さな蝶が川の自然環境を守った水鳥たちのオアシス、笹目川

ギンイチモンジセセリ。羽の表側は黒色、裏側は淡い黄土色で後ろ羽には、横一文字の銀白色の線があります。体長はわずか2㎝程度。この小さな蝶がなぜ笹目川の自然環境を守ったのでしょうか。

ギンイチモンジセセリは、主に河川敷や湿地のオギ、ススキ、チガヤの草原に住んでいます。この都市部に残された貴重な生息環境を保全するため、「多自然型川づくり」という河川改修が行われたのです。

笹目川は、南区の南部に広がる田んぼや畑の用水路として農家の生活を支えてきました。その川には、ゆく秋を惜しむかのように、水鳥たちをはじめ、たくさんの生き物が小さな命を育んでいました。さあ、秋の一日、笹目川をめぐってスプーン1杯の幸せを探そう!

4月から9月にかけて3回、成虫になるというギンイチモンジセセリ。説明板 は左岸のドウダンツツジの垣根の中にあります。

今回のさんぽ道は、笹目川のほぼ中間にあたる内谷橋からの周遊コース。先ずは右岸を下流に向かって歩きます。 内谷橋から眺めた笹目川の写真 笹目川の左岸には長々と桜並木が続いていて、春には、たくさんの花見客でにぎわいます。

内谷橋のたもとには、菖蒲川・笹目川等浄化導水事業の看板があります。それによると、荒川から取水し導管で内谷橋下の放水口から水を笹目川に流しているという説明しています。秩父山地で生まれた清流がここまで流れてきたのですね。

杭の上で甲羅干しする亀たち。亀は水中に打った杭の辺りに多く住んでいます。

笹目川のシンボル水辺公園橋。木造のアーチ橋でここからの眺めは抜群。

 水辺公園橋下の流れには、小魚が銀鱗を見せ、深みにはマゴイがゆったりと泳いでいます。

ちょっとひと息 笹目川の水源は?

河川には必ず水源があるものですが、笹目川にはそれありません。町の古老の話では、白幡沼が水源地だといいますが定かではありません。現在は菖蒲川、上戸田川、笹目川の水質改善と流量改善のため、荒川から取水し上流まで導水しています。令和2年8月の台風19号時には堤防の上部まで増水したため、水位監視カメラの設置について協議されています(自治会だより)

 

笹目川周辺は散歩やジョギングのメッカになっています。.

岸辺の木陰には日光浴をする人も。

真っ白なウエディングドレスのような羽衣をまとったコサギ。片方の足で水をかき回して魚を追い出して食べることもあります。

 青々とした若草を食べる水鳥やハトの群れ。 

秋の青空に映えてひときわ目立つサンゴジュ。漢字で書くと「珊瑚樹」ですが、赤く熟した実は、まさに海の宝石さんごそのものに見えます。 

最も身近な赤トンボ。北原白秋の「赤とんぼ」は、このアキアカネをうたったものかも。生まれた時は平地にいますが、少したつと山地に移り、秋になると平地に戻って来るといわれています。

岸辺の枯れ葉の中に生息しているオンブバッタ(メス)。メスがオスをおんぶしているところからその名があります。亭主関白ですね。

 

かつてはナラやクヌギとともに武蔵野のいたるところで見られたケヤキ。埼玉県の木でもあるケヤキは、早春の若葉のころの風情もたくましく、美しいが、秋の黄葉も華やかさのなかに淋しさも感じられます。名は、ほかより目立つという「けやけし」から変化したものといわれています。

 

ゆく秋を惜しむかのように静かに流れる笹目川。(戸田市側の笹目川橋からの眺め)

 

水鳥のカップルの写真 紅葉色に染められた川面。さざ波に包まれて泳ぐ水鳥のカップル。

ちょっとひと息 笹目川、むかしむかし

徳川8代将軍吉宗は、幕府の財政再建のため、広大な湿地であった見沼の開発を思い立ちました。吉宗の命により井澤弥惣兵衛は、利根川の水を引く見沼代用水を享保13年(1728年)に完成させました。さらに、根岸村と辻村は農地を潤すため、見沼代用水西縁から辻用水路を整備し、その水を笹目領内内谷村に落とし荒川に流しました。昭和になって排水路(現在の笹目川)が完成し、荒川に放流したと伝えられています。

       

岸辺で遊ぶ家族連れ。秋の陽が暖かい。川には水や動植物に親しめるよう木製のデッキが作られて、トンボや魚釣りが楽しめます。 

スタートの内谷橋に到着しました。いかがでしたか?さて、この旅のオマケとして、さらに上流に向かいましょう。この先には、野鳥がたくさん見られるスポットがあります。

日本最大のサギで灰色の羽衣に青みがあるアオサギ。じっと水面を眺める姿は、まるで仙人のようです。笹目川に住むのは、この一羽だけです。時々外出 するので出会うと、とてもハッピーな気持ちになることでしょうね。  

こんなところに、こんなものが?たわわに黄色の大きな実をつけた低木です。柑橘類には違いありませんが、ミカンではなさそう。果実の肌の色はオレンジではなく黄色っぽい。いろいろ調べてみましたが、オウゴンカン(黄金柑)らしい。一般には黄みかんといって中身も夏ミカンのように黄色いといわれています。せせらぎを子守唄にして育った赤ちゃんのように可愛いらしい。

■旅の終わりに■  市民の手で守られている笹目川
1970年代ごろから河川について治水・利水のほか「親水」という考え方が重視されるようになりました。さらに、コンクリート護岸を自然堤防に近い状態に戻すことで河川への親しみを取り戻し、水質汚濁を防ぎ、生物にやさしい川を回復したいという欲求がたかまりました。 笹目川は、こういった市民の要望に応えて整備されています。しかし、市街地の中を流れているため、ゴミの不法投棄が絶えず、市民ボランティア団体などの手で清掃活動が行われています。ぜひ、笹目川の貴重な自然環境を次代の子どもたちに伝えたいものです。

(事務所スタッフ:ひげじー)