ヤブガラシ
一見、平和に見える植物の世界でも熾(し)烈な戦いが繰り広げられています。
相手を抹殺し自らの勢力を拡大するヤブガラシ(藪枯らし)もそのひとつです。
ヤブガラシは、巻きひげを伸ばし植込みの植物にからみつきながら上にのびます。さらに、巻きひげは二つに分かれて植込みの植物全体をおおいつくし光を独占するのです。
つぼみは丸く、五弁の黄緑色の花を咲かせます。オレンジ色の花に見える部分は、豊富な蜜を出す花盤でなめるとほんのりとした甘さを感じます。ブドウ科の植物でブドウのような丸い実をつけます。
花言葉 攻撃的、不倫
ノゲシ
別名を乳草 とか苦菜(にがな)といいます。茎を切ると白い液体が出てきますが、なめると苦い味がするのでこの名があります。
「野芥子」といいますが、ケシの仲間でなくタンポポと同じくキク科の植物です。花も茎もなんとなくタンポポに似ていませんか?
果実期になると、タネには白い冠毛が付き、 風によって遠くに飛んでいきます。タンポポなどキク科の植物には食べられる植物がたくさんありますが、ノゲシも天ぷら、おひたし、油いためなどにすると美味しく頂けます。
花言葉 幼き友、旅人、追憶の日々
オヒシバ
もう何十年も前のことですが、筆者が子どもの頃、家の近くに大きな原っぱがありました。そこは子どもたちの格好の遊び場で、野球をやったり、水たまりで手作りの潜水艦を浮かべて遊びました。夏休みには、バックネットにスクリーンを張って映画会も催されました。 その広場の南の一角には、草原が広がっていて、トンボやバッタなどを追った思い出があります。
戦後の物資が不足していた頃は、野の草も子どもたちにとっては貴重な遊び道具でした。
オヒシバは、別名を「相撲取り草」とか「力草」と言って、男の子に特に人気がありました。遊び方はごく単純で、草の先端を結びあって引っ張りあいをし、相手の草の輪を切った方が勝ちというものです。単純な遊びですが、日の暮れるのも忘れて遊んだものです。
この草でいたずらもしました。オヒシバをアーチ形に結び、友達がその輪に足を引っかけて転ぶのを見て「やーい、やーい」とはやしたてたりしました。悪ガキ時代の懐かしい思い出です。
ハナニラ
ハナニラは、アルゼンチン原産の帰化植物。明治時代に園芸植物として輸入され、花が清楚で美しいところから人気を博しました。
細長い葉を切って匂いを嗅ぐと、ニラのような匂いがするところからその名があります。
ニラはネギ属でハナニラと葉の形が酷似していますが、近縁でも何でもありません。
現在でも園芸植物として栽培されていますが、野生化して雑草として扱われています。
道端で見かけると、「掃き溜めに鶴」ということわざを思い浮かべるほど、その美しさに思わず感嘆の声を上げることでしょうね。
ヘラオオバコ
在来のオオバコの葉は、根生し地面にべったりと広がります。しかも丸い形をしていますが、ヘラオオバコの葉は、ヘラのように細長い形をしているところからこの名があります。
ヨーロッパ原産の帰化植物で、日本に牧畜が導入された際に牧草のタネに混じって入ってきたと言われています。
ヘラオオバコの茎は、ひょろひょろと長く目立ちますが、オオバコは、葉に筋が数本通っていてこの筋のおかげで踏まれても丈夫です。ヨーロッパでは、ヘラオオバコは牧草地に繁茂していて、スコットランドでは、傷薬として使用されています。
花言葉 素直な心、惑わせないで
ギシギシ
公園とか空き地でよく見られます。花期には、黄緑色の花がぎっしりと付いた穂が立ち上がります。やがてかわいらしいタネが実り、ピーナッツのような皮をむくと真白な実が現れます。
ギシギシとは、妙な名前ですね。その由来ははっきりしません。茎と茎をこすり合わせるとギシギシと音がするとか、実がぎっしり詰まっているからなどの説がありますが、決定打ではないようです。
ギシギシには仲間が多く、ナガバギシギシ、エゾノギシギシ、アレチギシギシなどの外来種も全国的に広がっています。なお、在来種には、コギシギシ、ノダイオウなどがあります。
花言葉 朗らか、忍耐、抜け目なさ
ムラサキカタバミ
日本在来の「カタバミ」は、黄色の花を咲かせますが、ムラサキカタバミは、情熱的なピンクの花を咲かせます。それもそのはず生まれ故郷は南米大陸ですから。熱帯原産なので関西以西の暖かい地方で繁殖しています。
江戸時代の末に園芸用の植物として持ち込まれました。繫殖力がきわめて旺盛で雑草化しながら、道端や野原などに定着しました。別名はキキョウカタバミといいます。
花言葉 喜び、輝く心
イヌムギ
道端や公園、畑地などに自生し、小穂はカサカサして平べったい形をしています。野の草の名前には、例えば、「イヌホオズキ」、「イヌタデ」、「イヌビエ」などのように「イヌ」とつくものがかなりあります。人間界でも「犬死」、「犬侍」などの言葉がありますが、「似て非なるもの」、「役立たず」などの意味があります。
イヌムギは、見た目は穀物の麦のようですが、まったく食用にならないのは言うまでもありません。生まれは南米大陸です。
コバンソウ
野の草にもお金持ちや貧乏人がいます。例えば、貧乏草といえば、「ヒメムカシヨモギ」の別名です。お金持ちといえば、コバンソウの右にでるものは皆無でしょうね。
形も小判そのもの。水辺の風にゆらゆらと揺れる様は、見る人を豊かな気持ちにします。英名では、「揺れる草」、「うなずくイザベラ」。なんとロマンチックな表現でしょう。原産は気候温暖な地中海で、明治時代に観賞用として輸入されました。
花言葉 興奮
オシロイバナ
オシロイバナは、夕方から咲き始め夜間に咲きます。日中はつぼみのままで、日が傾いてくると、徐々に花が開き黄、紅、白などの可憐な姿を披露します。最近では、日中でも咲いている個体を見かけます。
この花は熱帯アメリカ原産で、江戸時代の初期に日本に渡来しました。花には微香があり、果実は球形で堅く黒熟します。漢字で「白粉花」と書くように、果実の中の白粉状の胚乳を白粉の代用にしました。歌麿の美人画の女性もオシロイバナのご厄介になったのでしょうね。口紅はもちろん紅花です。